漢の独り映画鑑賞録Vol.2『ラヂオの時間』
さて、疲れが抜けにくいお年頃になり、せめて気持ちだけでもリラックスを求める40歳半ばの私。
休日の2時間ばかり映画を観るのが現実を忘れるその一時。
今回も昔観ていた映画を観てみよう。
恋焦がれる恋愛もの。
刺激強すぎなもの。
そんなものはもう好みではない。
(個人的感想です)
クスッと笑えるのが心地良い。
なんやかんや言われたりもするが、自分は「三谷幸喜」映画が好きだ。
個人的だが話の流れやまとまり方が好きなんだな。
コメディが好みな人にはピッタリ。
やっぱり面白い作品たちをつくってくれるよ。
その中でも数年に一回忘れた頃に観て“やっぱり面白いなぁ”と思うのが三谷幸喜初監督作品『ラヂオの時間』なんだよな。
この作品の良さって知らないラジオ業界の話もありそうって思える中、ドタバタ展開で起承転結される心地良さがあるんだよ。
そして出演する役者が少なく各俳優達の見せ場があることもキャラクター演出が最高なんだよな。
自分は演技もよくわからないし一般視聴者だが、この出演俳優たちは演技本当に上手だと思う。
ただの好き嫌いで話してるが、それでも観終わった後の幸せな気持ちは役者の演技があってこそ素晴らしいと思わせるものだ。
役者みんなが主役みたいな小さい空間の中でストーリーが展開されるのは三谷作品の真骨頂と勝手ながら思う。
この映画ももとはとある有名劇団の演劇とのこと。
そこが反映されてるんだろうね。
ストーリーはラジオドラマという少し異質な中で、普段はどこにでもいそうな主婦が思いをこめ手掛けた脚本をもとに、一癖ある声優役者たちのせいであらぬ方向に展開していくコメディ。
生放送という時間設定だからこそ生まれる慌ただしさと時折差し込まれるクスッとくる笑いと会話にどんどん引き込まれていく。
「戸田恵子」さん筆頭に、多分大御所芸能人にもこんな人いるんだろうなぁ、と思わせる出演俳優たち、会社員として大人の立場で四苦八苦する「西村雅彦」さんたちに振り回される主婦役の「鈴木京香」さんに感情移入しちゃう。
ほどよくムカつく大人たちなんだよ。
「鈴木京香」さんに感情移入しすぎて、多少イジメ的な嫌な気分は心苦しいです。
日本の主婦が主人公の台本なのに主役の名前が気に入らないと勝手にアメリカ人の名前と設定に変えちゃったり、それにともない日本からアメリカに舞台設定が変わったり、最初から破綻しか見えないところから始まるのだからどう終わりを迎えるのだろうと先が見えない。
こんな訳分からん役者の顔を立てる中間管理職的立場の「西村雅彦」の適当な立回りも悪い方向に向かっていくから序盤からドタバタ劇が見え隠れしてるのが面白い。
最初の自分勝手な主張で脚本をどんどん変えてしまうのが自分たちの首を絞めることになっていく。
いらぬプライドと本音をぶつけ合い、話は膨らみありえないストーリー(結果的に宇宙に飛び出す話やそこから意味わからず戻る話など)になるのも、すべて最初の展開からならざるを得ないのが秀逸だ。
この映画のストーリー展開は複雑なようで実に単純だから気楽に楽しめるな。
各役者の演技と会話の節々も面白いなぁ。
今の名俳優たちがこぞって出演しているんだから間違いないよな。
個人的には主婦(鈴木京香)の旦那さん(近藤芳正)も乱入してきてからがさらに面白い。
最後は設定も何もかもが変わってしまうのに、紆余曲折を経てただ主人公が愛しい人と再会することを望む脚本家の願いが叶うその瞬間、くだらない大団円を迎える時はちょっした感動もの。
全然落とし所が違うのに、最後はやり切った感でハッピーエンドと感じてしまうほど達成感があるストーリーなんだよな。
いやぁ、あっという間の時間でした。
よく見ればカッコつけてるのもカッコ悪いよな。
なのに憎めないそれぞれの役者たち。
本気の仕事をしていく様はどんな時にもカッコ良くなっちゃうもんだ。
おヒョイさんの効果音制作は当時話題だった記憶。
映画やドラマはご都合主義だ。
この映画もそんなところはたくさんある。
それがなんだ。
当たり前のご都合主義だからこそ、こんなにも面白い映画となっているではないか。
今の若い感性にはどう届くか不安なのは確かだ。
これまた派手な演出もないし、変わり映えしない空間映像だから、派手な映画が好きな人には合わないかもな。
でもコメディ映画の一つを知るにはもってこいの映画なのでおススメ。
是非観てない人には試しに観てほしい“癒しの作品”です。
三谷映画の始まりであり、これから続く三谷作品もおススメだぞ。
唐沢寿明超カッコ良い〜‼︎
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