”編集長代理”の徒然ESSAY No.5「博物館浴とアート処方」

更新日 2025年06月26日
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こんにちは、みなさん。編集長代理です。

東北は梅雨入りをしましたが、真夏のような暑さの日々が続いています。

みなさんはいかがお過ごしでしょうか?

私は先日、福島県にある「諸橋近代美術館」で開催していた”ととのう展”に足を運びました。

今回は、そんな”ととのう”についてのエッセイです。

 

ここ数年、サウナブームが熱い。2021年の新語・流行語大賞にノミネートされた「ととのう」とは、サウナにおける「サウナ・水風呂・休憩」のサイクルを繰り返すことで得られる爽快感のことらしい。私自身はサウナが苦手なせいか、そんなサウナブームには見向きもしなかったのだが、「ととのう」という言葉には興味を惹かれた。

これは私自身が最近「あ〜!ととのってる!」と強く感じたことがあったからだろう。妊娠、出産を終え、出産によるダメージが回復してきた頃、体中が悲鳴を上げていることに気がついた。足腰、背中、関節…。そんな時に出会ったのが「カイロプラクティック」。骨盤と背骨の歪みをとることで、ほとんどの体の不調を解消することができるという。カイロプラクティックの基本的な考え方は、「歪みをとることで神経の圧迫をとり、不調を治す」というもの。痛みをとるのではなく、根本から治すということだ。実際に施術を受けると、今までの不調が嘘のように溶けて消え、「なんとなく怠い」や「なんだか頭が痛い」「何もしていないのにすごく肩が凝る」と言った原因の分からない不調から解放された。この時、私は「ととのう」と出会ったのだ。今でも月に1回程度メンテナンスをしてもらっている。

このように「ととのう」には身体的・肉体的なものもあるが、精神的なものも現代の殺伐とした毎日を生き抜く私たちには必要不可欠だろう。

先日、福島県耶麻郡にある諸橋近代美術館に足を運んだ。ここは、世界でも有数のサルバドール・ダリ作品を所蔵している美術館。ここで開催されていた”ととのう展”では、博物館浴という考え方が提唱されていた。博物館浴とは、博物館や美術館を訪れ、作品を鑑賞することでリラックス効果が得られるというもの。森林浴などは耳馴染みがあるが、自然に触れるのかアートに触れるのかという違いだけで、得られる効果は同じである。

 

諸橋近代美術館 https://dali.jp/

諸橋近代美術館 https://dali.jp/

 

また、ベルギーやカナダではアートを処方するプロジェクトなども行われているのだという。医師が患者に処方するのは、薬ではなく近所の美術館の鑑賞券。心の休息は、時間や仕事、日常に追われている私たちにとって、体を休めることと同じくらい大切なことだ。

美術館を訪れた際、鑑賞のスタイルをもっている人はどのくらいいるだろうか。まだそれをもっていないのであれば、どのような休息が自分にとって1番効果的なのかを探るように、自分の鑑賞スタイルを見つけるのも良いだろう。私は美術館に行くと、一度さらりと終わりまで進み、そしてまた最初に戻ったり、気になった作品をもう一度見たり、その空間の中を行ったり来たりする。気になった作品は特に時間をかけてじっくりと鑑賞したいし、他の作品を見た後にまたその作品に戻ったとき、最初に見た瞬間と印象が変わるのかどうかも試したい。人と美術館に行くこともあるが、入り口で解散、途中で出会ったら感想を交わし、また離れる。ミュージアムショップで最後に合流するのがいつもの流れだ。そうすることで鑑賞を誰にも邪魔されず、なおかつ作品の感想をすぐに誰かに話せるというメリットがある。私の休息はインプットとアウトプットがセットだからだ。燃え尽き症候群になる時は、アウトプットが過剰なので、アート鑑賞でインプットを増やす。

私は普段から絵画を鑑賞するし、自宅に絵画作品も飾っている。美術館や博物館にはできれば定期的に足を運び「心のメンテナンス」を行いたいが、それが叶わない時のために「日常の手当」として、いつでもアートを鑑賞できるように、絵画を所有している。美術館でしか絵を見ないというのは、重症になってからようやく病院に行くようなもので、”未病対策”こそがまずは必要なのだ。

自分の休息は何か、「ととのった」状態を知ることで、これからの人生が少しだけ楽になることもあるだろう。

 

執筆者プロフィール

H・T
H・T
「編集長代理」東北出身の酒呑童子。元和食の板前、実は甘いものが苦手。温泉をこよなく愛し、プライベート でも日本全国を飛び回っています。

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