トム・エバハートって一体どんな人?
トム・エバハートの名前を初めて聞く方もまだまだ多いことでしょう。
今回は、アーティスト「トム・エバハート」が一体どんな人物なのかをご紹介します。
何より彼を1番有名にしているのは、「世界で唯一『PEANUTS™︎』のキャラクターを使ってアートを表現できるアーティスト」ということ
『PEANUTS™︎』は今も昔も大人気のコミックですが、その原作者である故チャールズ・シュルツ氏がまだご存命のときに、トム・エバハートを「世界で唯一キャラクターを使ってアートを表現できるアーティスト」と認めました。これは1989年のことです。
トム・エバハートは1953年にアメリカで生まれ、芸術の名門イェール大学を卒業後、パリやニューヨークで絵画を学びました。
当時風景画家をしていたトム・エバハートは、現代におけるポップアートの代表的なアーティストであるアンディ・ウォーホルやジャン・ミッシェル・バスキア、キース・ヘリングと深い交流がありました。
1970年代〜1980年代、風景画家として成功を収めていましたが、アーティストたちとの交流の中で、トム・エバハートは自身の新しいアートの可能性を模索していました。
そんな中、広告のプロジェクトをきっかけにシュルツ氏と出会いました。
当時のシュルツ氏は、コミック以外のグッズやポスターの企画を任せるために、広告代理店を通して人を募集していたのです。
コミックと風景画、全く違ったジャンルでありながら、トムはそこに挑戦することにします。
まずシュルツ氏のコミックがどのように描かれているのかを探るため、トムは部屋の壁一面にコミックを拡大して投影します。すると、描かれた線はまるで自分が風景画を描く時の線と全く同じだということに気がつきます。これは、その後の2人にとって運命的な出来事でした。
シュルツ氏の作品を見てラインに共通点を見出したトム氏は2週間という短い期間でシュルツ氏のラインをマスターします。そのことに感動したシュルツ氏はその後の広告やキャンペーンなどコミック以外のプロジェクトをトム・エバハートに任せることとなりました。
それは、約8年間にわたり500件ものプロジェクトになりました。
しかし1988年、トム・エバハートは突然の病に倒れました。
病名は肝臓癌と結腸癌。病状はとても深刻で、ここまで続けてきたプロジェクト、画家としての創作活動を休止せざるをえなくなりました。
この時のトム・エバハートに与えられたものは、シュルツ氏から贈られたたくさんのスケッチ、花屋が開けるほどのお見舞いの花、そしてこれまで自分が行ってきた活動を振り返る時間でした。
そんな中、シュルツ氏からある提案がありました。
「『PEANUTS™︎』のキャラクターを使って、アートを描いてみないか?」
トムは戸惑いました。すでに世界的に人気のキャラクターを、しかもそれを自分のものとして描くことはできるのか。
そうして闘病生活を続けていたある日。トムは、病室の窓から太陽の光が差し込み、窓際に置かれていた花の影が壁に大きく映し出されたのを見ます。そして、初めてシュルツ氏のコミックを壁に拡大して映し出した時のことを思い出しました。
ここでトムは、「自分ならコミックの枠に捉われることなく自由な新しいアートとして表現できる」と気がつきました。これはトム自身がずっと探し求めていた、自分にしかできない新しいアートの可能性だったのです。
1989年、余命宣告まれでされていたトムは奇跡的に癌を克服します。
そしてその新しいアートを描き、それを見たシュルツ氏はトムの作品を絶賛。「キャラクターを使ってアートを表現できるアーティスト」として正式に認め、契約書をプレゼントしました。
2000年にシュルツ氏が癌で亡くなった後も、トムは世界で唯一のアーティストとして活躍をし続けています。