舞台に恋して 第1回

みなさんこんにちは!新人スタッフのA・Hです。
7月上旬の涼しさはどこへやら、一気に夏到来ですね。京都は盆地のため暑い空気がこもり、蒸し蒸しとした暑さがしんどかったのですが、今年は全国的に雨が多い影響で京都に限らずどこも蒸し暑い日が続いていますね。
そんな蒸し暑さを吹き飛ばす絢爛豪華で息を呑む女形の世界をご紹介します。
第1回「舞台に恋して」は4/8~4/23まで新橋演舞場で上演していた『坂東玉三郎 特別公演』です。『口上』に始まり、三つの楽器を奏でる『三曲糸の調べ』、竹久夢二の半生を描いた『夢二恋慕』と夢二が描いた名画をもとに作られた『長崎十二景』を用いた舞踊劇など坂東玉三郎さんの魅力を余すことなく楽しめる公演でした。

歌舞伎公式総合サイト歌舞伎美人よりhttps://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/980/
その中でも今回、私が待ち望んでいたのが、『三曲糸の調べ』です。
三曲とは琴・三味線・胡弓の楽器の演奏のことで、この三曲は『阿古屋』という演目で演奏されます。
実は『阿古屋』は私が玉三郎さんに出会ったきっかけの演目でもあり、初めて観た歌舞伎でした。当時高校生だった私は知人の勧めで初めて、一人で歌舞伎座に足を踏み入れたのですが、その時のドキドを今もよく覚えています。
『阿古屋』のあらすじ
『壇浦兜軍記』に登場する遊女・阿古屋。平家滅亡後、源氏方に追われる恋人・景清の行方捜索のため、代官・重忠の前に引き立てられます。
景清の居場所を隠す阿古屋に対し、重忠は「心に偽りがあれば演奏の音色が乱れるはず」と、琴・三味線・胡弓の演奏を命じます。しかし阿古屋は、乱れのない完璧な演奏を披露し、みごと解放されるのでした。
三つの楽器を演奏する高度な技量と夫を想う心理描写、そして傾城としての知性、気品、色気を表現しなければならず、女形の中でも屈指の大役です。
なによりただ演奏するのではなく、阿古屋として演奏しなければならないという難しさ。今回は演奏のみの構成だからこそ、その技量の高さが一層際立っていました。
阿古屋の代名詞でもある孔雀の前帯は、締めていると琴と三味線の音が上手く響かないそうです。今回は阿古屋ではないため、衣装も別のものにされており、演奏だけをじっくりと楽しめる贅沢な時間でした。今回で玉三郎さんの演じる阿古屋を観るのは四回目ですが、変わらず美しく芯の強さを感じられる姿は玉三郎さんの日々の研鑽の賜物なのだと深く感じます。

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(『阿古屋』の衣装。刺繍は手縫いで重さは25キロ以上になるという。)
1732年に人形浄瑠璃の演目として初めて上演された『壇浦兜軍記』。約300百年の歴史をもつ演目の大役を演じる重圧は、想像に難くありません。しかも歴代の演じ手たちが各々の色を重ね、演じる人を選ぶようになった至難の役である阿古屋。伝統を継承し、妥協なく演じ続ける方がいるからこそ、私たちがこうして観劇を楽しめるのだという贅沢を噛み締めながら、私も日々の研鑽に励みたいと思います。
御年76歳の坂東玉三郎さんが演じる阿古屋を観られる機会は本当に貴重なものです。9月には博多座で『坂東玉三郎 特別公演』の上演が決定しています。気になる方はぜひ足を運んでみてください!